〔共通事項〕をよりどころとして表現と鑑賞の関連を図った指導法の工夫について提案します!!    
                                                                                     

2 研究の実際

(1) 学習指導要領における小学校音楽科の考え方
A 小学校音楽科の内容構成 

音楽科の内容は、「A表現」、「B鑑賞」及び 〔共通事項〕で構成されています。

「A表現」の指導項目については、歌唱、器楽、音楽づくりごとに指導内容を整理して示されているとともに、表現で取り扱う教材も示されています。

「B鑑賞」の指導項目については、鑑賞の指導内容を整理して示されているとともに、鑑賞で取り扱う教材も示されています。

〔共通事項〕は、表現及び鑑賞の全ての活動において、共通に指導する内容を示されており、表現及び鑑賞の能力を育成する上で共通に必要となるものです。

各学年を通じて、次のような内容で構成されています。

領域
A 表現
B 鑑賞
活動
歌 唱
器 楽
音楽づくり
鑑 賞

 

 

 


聴唱・視唱すること



音楽を感じ取って歌唱の表現を工夫すること



楽曲に合った表現をすること


声を合わせて歌うこと


聴奏・視奏すること



音楽を感じ取って器楽の表現を工夫すること



楽曲に合った表現をすること


音を合わせて歌うこと



音の様々な特徴に気付くこと(低学年)

音楽づくりのための発想をもち即興的に表現すること  (中学年及び高学年)

音を音楽へと構成すること


楽曲を全体にわたり感じ取ること

楽曲の構造を理解し聴くこと 



楽曲の特徴や演奏のよさを理解すること

共通

事項

ア 音楽を形づくっている要素を聴き取ることとその働きを感じ取ること

イ 音符、休符、記号や音楽にかかわる用語を理解すること

小学校学習指導要領解説 音楽編(平成 20年8月)p13、14より

B 〔共通事項〕の内容

〔共通事項〕

「A表現」及び「B鑑賞」の各活動を通して、次の事項を指導する。

〔共通事項〕は、表現及び鑑賞のすべての活動において、共通に指導する内容を示している。したがって、〔共通事項〕は、表現及び鑑賞の各活動を通して指導するものである。

ア 音楽を形づくっている要素のうち次の(ア)及び(イ)を聴き取り、それらの働きが生み出すよさや面白さ、
  美しさを感じ取ること。
  アは、音楽を形づくっている要素のうち、(ア)の音楽を特徴付けている要素及び(イ)の音楽の仕組みを聴き取り、それらの働きが生み出すよさや面白さ、美しさを感じ取ることについて示している。

(ア)の「音楽を特徴付けている要素」

低学年
音色、リズム、速度、旋律、強弱、拍の流れやフレーズ
中学年
音色、リズム、速度、旋律、強弱、拍の流れやフレーズ音の重なり、音階や調
高学年
音色、リズム、速度、旋律、強弱、拍の流れやフレーズ音の重なり、音階や調和声の響き

(イ)の「音楽の仕組み」

低学年
反復、問いと答え
中学年
反復、問いと答え変化
高学年
反復、問いと答え変化音楽の縦と横の関係

ここで示している音楽を特徴付けている要素及び音楽の仕組みは、特定の音楽にかかわるものではなく、世界の様々な国の音楽に共通に含まれるものである。

なお、「音楽を形づくっている要素」とは、「音楽を特徴付けている要素」及び「音楽の仕組み」に加え、歌詞、歌い方や楽器の演奏の仕方、演奏形態など、音楽というものを形づくっている要素を含むものである。

〔共通事項〕 ア 音楽を形づくっている要素
(ア)音楽を特徴付けている要素
(イ)音楽の仕組み

 

音色  リズム  速度  

旋律       強弱  

拍の流れやフレーズ

 

音の重なり  音階や調

 

和声の響き

 

 

反復  問いと答え 

 

 

変化 

 

音楽の縦と横の関係

                     

アの事項を扱う際には、以下のことに留意する必要がある。

歌唱や器楽、鑑賞の活動においては、取り扱う楽曲の曲想を感じ取り表現したり、鑑賞したりすることが大切となる。ここでいう「曲想」とは、その楽曲に固有な気分や雰囲気、味わい、表情を醸し出しているものである。一つ一つの楽曲のもつ独特な曲想を味わい、曲想に合った表現を工夫したり、曲想を味わって聴いたりする活動は音楽の学習において重要な活動である。

この曲想を生み出しているのは、音楽を特徴付けている要素や音楽の仕組みのかかわりによってつくられる「楽曲の構造」である。音楽を特徴付けている要素や音楽の仕組みは、先に述べたようにどの様式やジャンルの音楽にも含まれており、児童はどの楽曲からもそれらを聴き取り、それらの働きによるよさや面白さ、美しさを感じ取ることができるのである。

イ 音符、休符、記号や音楽にかかわる用語について、音楽活動を通して理解すること。

イは、「第3指導計画の作成と内容の取扱い」2(6)に示した音符、休符、記号や音楽にかかわる用語を音楽活動を通して理解することについて示している。

「音楽活動を通して」とは、音符、休符、記号や音楽にかかわる用語を音楽の学習活動の中で実際に生かすことのできる知識として理解することの重要性を述べたものである。そのためには、児童が、音符、休符、記号や音楽にかかわる用語を含んだ楽譜を読むことの必要性を感じることができるようにすることが大切である。

〔共通事項〕イ  音符、休符、記号や音楽にかかわる用語

   
 
〔共通事項〕と表現や鑑賞の各活動との関連
   歌唱や器楽の活動を通して学んだ音楽を特徴付けている要素及び音楽の仕組み、音符、休符、記号や音楽にかかわる用語を音楽づくりの活動に生かすようにするとともに、音楽づくりの活動で学んだ音楽を特徴付けている要素及び音楽の仕組み、音符、休符、記号や音楽にかかわる用語を歌唱や器楽の表現に生かすようにすることが大切である。

また、鑑賞の活動を通して学んだ音楽を特徴付けている要素及び音楽の仕組み、音符、休符、記号や音楽にかかわる用語を表現の各活動に生かしたり、表現の各活動で学んだ音楽を特徴付けている要素及び音楽の仕組み、音符、休符、記号や音楽にかかわる用語を鑑賞の活動に生かしたりするなど、表現と鑑賞との関連を十分に図ることも大切である。

小学校学習指導要領解説 音楽編(平成 20年8月)p15〜19より

  学習指導要領に〔共通事項〕が新設され、表現及び鑑賞のすべての活動において、共通に指導する内容が示されました。〔共通事項〕を教師が十分理解し、どのように表現及び鑑賞の各活動を通して指導していくのかがこれからの授業づくりに大切になります。

これからの授業づくりでは、〔共通事項〕を音楽の学習のよりどころとして表現と鑑賞の関連を図った指導法の工夫が求められます。

 
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